リスボンに、アルファマと呼ばれる地区があります。ここは言ってみれば、グラナダのアルバイシンと同じで、古い一角。とても寂れています。でもその寂れ方に根性が入ってると言うか、見ていてあまりに美しく思える古ぼけ方です。やはりアルバイシンのように、斜面にびっしりと家が立ち並んでいます。その一軒一軒を見ると、壁の色がはげていたり、タイルがはがれていたり、朽ちかけていたり、洗濯物が干されていたりとかなりすごいのですが、まとめて見るとその中にとてもバランスのとれた美しさを発見します。ちょっとハバナに似てる感じ? テレビと映画でしか見た事ないけど。
何度か写真を撮ろうと試みたのですが、その時に持っていたのはカラーのフィルム。ファインダー越しに覗く度に「これは白黒でなくちゃ」と諦めました。だからアルファマの写真はかなり少ないです。リスボンには確か2泊しましたが、半分以上はアルファマ散策に費やしてしまいました。だから「リスボンどうだった?」と聞かれても、「...アルファマ」で話が終わってしまいます。上の写真はアルファマが見られるサンタ・ルジア展望台から撮影したものだと思います。ちょっと忘れちゃったな。この時酔っ払ってたし。
前にも触れましたが、ジョゼ・サラマゴJosé Saramagoと言うポルトガルの作家は現在スペイン在住です。たまにラジオに出演したり、新聞に寄稿したりしています。スペイン語も喋りますが、彼が発表する作品はポルトガル語で書いています。彼は1998年にノーベル文学賞を受賞しているのですが、彼の作品の中に「ポルトガルへの旅」と言う本があって、私はそれを友人へのプレゼント用にボリビアで買いました。装丁が綺麗だったので、それでついつい手が出てしまったのですが、その表紙は今考えてみるとアルファマだったかも知れません。いずれにしても彼の「ポルトガルへの旅」と言う本がポルトガル旅行のきっかけになりました。特に村々の描写が美しいんですよね。日本語版は出てるんでしょうか。出ていたらこれはおすすめです。絶対にポルトガルに行きたくなりますよ。
私が好きなポルトガルのグループで、Madredeusと言う歌手がいます。日本では10年以上前に車のコマーシャルで1曲使われたので、彼らの曲を聞いた事がある人は多いと思います。リスボン、特にアルファマを歩いている時に思ったのですが、彼らの曲はアルファマにぴったりです。そう言えば彼らはヴィム・ヴェンダースの「リスボン物語」と言う映画に出演しています。ちゃんとMadredeusのままで、映画中で歌ったりもしています。ボーカルのテレサの声が何とも言えません。この映画も面白かったですね。相当地味ですけどね。
と言う事で、Madredeusの曲の中に、その名も「Alfama」と言う曲があるので、下に歌詞を挙げておきます。確かにこの曲、アルファマですよ。アレンジが。他には初期のアルバム、Os Dias da Madredeusの1曲目、インストルメンタルのAs Montanhasと言う曲。上の写真を見るとこの曲を思い出してしまいます。
Alfama
letra: Pedro Ayres Magalhães
Agora
que lembro
As horas ao longo do tempo
Desejo
Voltar
Voltar a ti
Desejo-te encontrar
Esquecida
em cada dia que passa
nunca mais revi a graça
dos teus olhos
que eu amei
Má sorte
foi amor que não retive
e se calhar distraí-me
qualquer coisa que encontrei
訳
いま
ずっと時に沿って
続いてきた時間を思い出す今
わたしは
帰りたい
おまえに帰りたい
わたしはおまえに会いたい
過ぎてゆく1日ごとに
おまえは忘れられて
わたしの愛した
おまえの眼に宿る魅力を
わたしは2度と見る事ができなかった
不運
その愛をわたしは引き止めなかった
もしかしたら愛がわたしの気をそらしたのか
...わたしの出会ったどうでもいいこと
上のアルファマですが、ヴィム・ヴェンダース監督の「リスボン物語」のサウンドトラックに収録されています。Madredeusが出演していますが、この映画、良かったなあ。
で、左のアルバムはベスト盤です。流石ベストだけあってどの曲も聞きごたえがあります。Alfamaの他には、A Andorinha da Primaveraが好きですが、まあ悲しい曲ですので、明るい曲が好みの方にはおすすめしません...。